親方
弟子の育て方で悩んでませんか?
私はこれまでに7人の弟子を育ててきまして、今では7人皆んなが、それぞれ立派なクロス職人として活躍しています。
といっても、今現在私に弟子はいませんが・・・
ところで
「どうやって弟子を育てればいいの?」
度々こんな質問を受けますので、この機会にブログで「私流の弟子の育て方」なるものを書き留めておこうと思います。
この記事が誰かの役に立てるなら幸いです。
クロス職人を育てる私の方法
そもそも、クロス屋の弟子は1~2年経てばそれなりに仕事を覚えてくれますし、勘の良い子だと半年程度で仕事の要領をつかみます。
私が弟子だった時代では「仕事を見て覚えろ」なんて親方に言われていましたが、実際のところ材料に触らなければ「勘」はつかめません。
いきなり結論を言えば、職人を育てる方法は経験を積ませる以外に無いと思います。
とはいえ、「半人前の素人に仕事をさせるのは気が引ける」という方もいるのではないでしょうか?…。
事実、最終仕上げであるクロスは、失敗が非常に目に付きますし、手直し・補修が続けば親方の信用を失います。
ですので、なかなか弟子の出番が回ってこない事になります。
弟子が失敗したらやり直せば良い
それでも私は弟子にクロスをどんどん貼らせるべきだと思います。
なぜなら、仕事を見て覚えるのは不可能だからです。
ちょっと考えていただきたいのですが・・・
見ただけで仕事を覚えることが出来るなら、今の時代YouTubeなんかを永遠見せておけば誰だって職人になれますし、もしかすると、親方よりもクロスの知識が増えるかも知れません。
しかし、実際にはどうかと言いますと素人のクロス貼替なんて酷いものです。
素人ⅮⅠYの手直しに行くと、全部貼替えた方が早い案件ばかりです。
つまり、「見ただけで覚えた仕事は役に立たない」という結論です。
逆に言えば、弟子にはクロスをどんどん貼らせないと、いつまでも覚えてくれませんし、もっと言うと初日から貼らせて経験を積ませるのが正解だと思います。
少しでも早く戦力になれば、親方自身が楽になる訳ですし…。
ただ、どうしても気になる方に秘訣を言うならば「弟子が失敗した時には親方自身がケツを拭いて責任を取れば良いだけの事」だと思います。
初日に腰道具を与えてあげる
クロス屋に限らず、建築職人が身に付ける腰袋には一定数の憧れがあるようです。
「職人っぽくって格好いい」
こんな感情があるのかは分かりませんが、これから始まる新しい仕事の「自分用の道具」を持たせてもらうことで、少なからずテンションが上がります。
少なくとも、私が育てた弟子たちは皆、道具を与えると瞳が輝いていました。
ついでに、覚悟や責任感を感じてくれる子もいました。
それだけ腰道具に大きな力があるとは思えませんが、どうせいつかは必要なわけですので、私は例外なく弟子入りした初日に腰道具を与えていました。
もしも、新入りの子がモチベーションを上げて、頑張ってくれたら儲けものなので、ぜひ初日から腰道具を与える事を試して頂きたいです。
基礎的なことは繰り返し何回も教える
ある程度仕事に慣れた親方やベテラン職人には簡単で当たり前の事でも、新入りの弟子から見ると全てが初めての事ばかりです。
なので、例えば「ジョイントを切る前にカッターの刃を折る事」なんて1回やそこら教えてもすぐには身に付きません。
クロス屋には「クロスを貼る基礎」が必要で非常に大切ですので、基礎的なことは習慣になるまで何度でも言い聞かせることが大切だと思います。
職人は寡黙な方が多く、弟子との会話が不足しがちですが、「基礎的なことを教える」という事も立派な会話になり得ます。
無口な親方と一緒にいることは、新入りの弟子にとってはかなりの重圧になると思いますので、会話に困ったときには「基礎」を語ることをお勧めします。
親方は「親」だと自覚する
私のもとに弟子入りした子は全員が私の子供だと考えてきました。
つまり、精一杯の愛情を込めて育ててきたわけです。
その結果かどうかは分かりませんが、独立した弟子たちとは今でもしっかり繋がっていますし、呼んだら応援に駆けつけてくれます。
・・・ある程度は・・・笑
「何が言いたいの?」
こんな疑問もあると思います。
要するに、弟子を道具だと思わず、自分の子供だという覚悟を持てば「弟子も必死に仕事を覚えようとしてくれる」という事です。
「弟子をとってもすぐ辞めてしまう」
こんな風に嘆く親方がいますが、原因は金銭面(給料)の問題ではないと思います。
もちろん、辞めてしまう理由には「給料が安い」という問題もあるでしょうが、親方が「真剣に仕事を教える」という姿勢と「期待している」という思いを伝えることで防げることが多々あります。
将来独立していく弟子が恥をかかないよう精魂込めて育ててあげれば、自ずと弟子はいっぱしになります。
職人を育てる私の方法まとめ
最後までご覧いただきありがとうございます。
終わりにポイントをまとめて紹介します。
- どんどんクロスを貼らせる
- 失敗したら自分自らが責任を取ってあげる
- 基礎的なことを繰り返し教える
- 弟子が恥をかかないよう親心を持つ
私の場合だとこんな感じで弟子を育ててきました。
ということでこの記事は以上です。